BMWとトヨタの提携については、提携までの背景から現在までの協業状況、今後の見通しをBMWの視点で解説します。
BMWとトヨタが提携合意の変遷
2011年12月に環境技術でBMWとトヨタが提携合意
- 既にBMWがトヨタへ中型車用ディーゼルエンジンを供給。
- 共同開発での次世代リチウムイオン電池開発もスタート。
2013年1月には環境技術の提携拡大で正式契約
正式締結の契約内容は、以下の4点になります。
FCEV(水素燃料電池車)
BMWとトヨタは、ゼロエミッション社会の実現に向け、FC技術の普及を共通の目標とし、中長期的な協力を進めていく。
2020年を目標に、両社の技術を持ち寄り、FC車の普及拡大を目指し、FCスタック・システムをはじめ、水素タンク・モーター・バッテリーなど、FC車の基本システム全般の共同開発を行う。
また、FC車の普及に必要な、水素インフラの整備や規格・基準の策定に向け協力していく。
スポーツカー
両社は、ミッドサイズのスポーツカーに搭載する共通のプラットフォームのコンセプトを決定するためのフィージビリティ・スタディを開始することで合意。お客様によりご満足いただけるよう、両社の技術と知見を高いレベルで融合していく。
同フィージビリティ・スタディは、本年中に完了する予定。その後、両社は、スポーツカーの共同開発に向けた将来の更なる協力について検討していく。
軽量化技術
強化樹脂など先端材料を活用したボデー構造の軽量化技術の共同開発を行っていく。成果は共同開発するスポーツカーのプラットフォームや両社の他の車種にも織り込む予定。
ポストリチウムイオンバッテリー
技術エネルギー密度や燃費の面で、現在のリチウム電池の性能を大幅に超えるリチウム空気電池を共同研究する。
2015年5月時点で共同開発のスポーツカーは2019年発表
BMW製の直列4/6気筒ターボエンジンとシャーシベースという、スープラが想定されていた一方でBMW製では価格が高くなりすぎるというピンボケのジャーナリストコメントもありました。実際、現行スカイラインはメルセデス製エンジンを搭載したモデルもあり、価格は日本車として逸脱してはいませんでした。
ただ、レクサスLFAやレクサスFモデル、トヨタ86などトヨタ単独でスポーツカーを製造できるノウハウは十分あり、BMWからの技術供与を受ける必然性は全く無い状況でした。
ハイブリッドモデルでは先行しているトヨタですが、パワー重視型HVでノウハウを蓄えたBMWは、プラグインハイブリッド(PHV)の2リッター直4ターボモデルを発売しています。
2025年以降も継続予定
ドイツBMWのツィプセ最高経営責任者CEO、トヨタ自動車との提携を強化する意向を示し、燃料電池車やスポーツカーの共同開発を中心とした現在の関係を2025年以降も継続したいとの発表。
提携継続のポイントは下記の通り。(2020/12発表)
- 自動車関連イベントで「今後数十年、提携を強化する」
- 燃料電池車については、水素生産産業化、政策推進の恩恵
- 車種のスリム化によりコスト削減
電動化や内燃エンジンのラインナップでトヨタを圧倒
ダウンサイジングコンセプト
- 直噴ターボガソリンエンジン
- 直噴ターボディーゼルエンジン
- ハイブリッドエンジン(HV)
- プラグインハイブリッド(PHV)
- 電気自動車(EV)
- リチウムイオンバッテリー
- 軽量化のアルミ・カーボンボディ
先進テクノロジー分野として列挙してみた。
提携当時は、両社で開きのあった分野も双方のニューモデルを見ると、両社の技術力は、急速に接近しつつ、独自に進化しつつあるように見える。シャーシやエンジンの流用などもう少し早い段階での相互供給が実現化されるものと予想していたが、思いのほか時間がかかっているように思える。
提携によるメリットよりも、独自開発のスピードが速く、提携メリットが全く生かせない状況なのかもしれない。
電動化やPHVではBMWはトヨタの遥か先にいる
BMW i3/i8に加えて、新型EVのコンセプトモデルが登場しています。そして第二弾のi4やiXの新型EVモデルも早々に市販化されています。
すでに市販化後のノウハウも蓄えた結果、欧州全体としてEV化に舵を切る目途感があるとも言えます。EVのパワーマネージメント、カーボンボディの軽量化とコストダウンの手法などトヨタが学ばなければいけない分野です。HVの技術転用などほんの一部に過ぎない結果が、EVの発売遅延に繋がっているのです。
HVの技術があればEVはすぐ作れると豪語する自動車評論家やジャーナリストは信用に値しません。
トヨタは現実普及路線としてのプリウスだったのでしょうが、ノートeパワーに敗北し「なんちゃってEV」に負けている状況なのです。
HV販売台数で有頂天となっていたトヨタはEV界から取り残されている状況です。
提携先のBMW iブランドをOEMとして受け入れることが、スープラ同様にトヨタが真っ先に取り組むべき事項なのです。
水素自動車の協力関係とは
水素エンジン車としての試み
BMWも2006年に7シリーズ(E68型ハイドロジェン7)では、水素エンジンを搭載した自動車を限定生産し、市販投入の前段階まで進んでいました。
リース車による展開も試みましたが、E68登場後、市販化に向けての対応は頓挫しました。
水素エンジン車については、トヨタが近年レースカーでの対応が見られますが、市販化としての取り組みは、BMW方が、10年以上早かったと言えます。
また、水素スタンドのインフラレベルが電気スタンドに比べて圧倒的に遅く、欧州がEVに大きく舵を切ったことで水素自動車の意味無くなったようです。
この経験により、BMWは、水素エンジンの将来性の無さに見切りを付けたと言えます。
以降、水素エンジン車の実験車両は出ておらずBMWとトヨタ提携後の関係において、BMW製の水素エンジン車は、全く音沙汰が無くなってしまったようです。
水素燃料電池車としての試み
BMWは、トヨタ製MIRAIによる水素燃料電池車に興味が湧き、トヨタとの提携を実施しました。
トヨタ製の高圧縮水素タンクや燃料電池スタックを用いて5シリーズグランツーリスモ(F07)の水素燃料電池車を試作します。
トヨタは今もFCEVに可能性があると見ている
トヨタのMIRAIは、2020年に2代目が登場しましたが、実際の普及率でも電気自動車に先を越されてしまいました。
BMWでは、その実現性に見切りを付けて、2006年以降の時期モデルの発表を見送っています。欧州では水素活用の話が盛り上がっていますが、インフラ整備も含めて実現性は、かなり難しいと言えます。トヨタでは、今もEVとFCVの二者択一、適材適所などという夢物語を描いているようですが、あまりにも高価なFCVに他メーカーでの参入はヒュンダイぐらいです。
技術開発として継続する意味はありますがインフラ整備なども含めて課題の多い現実が直視できないようです。
- トヨタ:技術的な熟成は進んでいる。
- BMW:インフラを含めて実現性で、EVに劣ると判断
X3/X5のリース車両から再開
トヨタミライのFCV技術を生かした、X3/X5モデルのリース車両が準備段階に。
背景としては、BEV以外のCo2削減施策として、FCVが着目されたのが理由となっています。
7シリーズ(E68)で一旦は、市販化を諦めた水素自動車です。
今回は、水素燃料電池車として、再復活したイメージになります。
2022年、水素燃料電池車(FCV)「iX5 Hydrogen」の小規模生産を開始とあります。
BMWはFCEVの市販化には及び腰の実態
現在、BMW iX5の試作車は完成済です。トヨタ製の燃料電池システムは市販車ベースであるため、信頼性も全く問題はないでしょう。しかし、未だにトヨタMIRAIのように一般市販化しないのは、FCEVの将来性について、まだまだ疑問があると見ているのでしょう。
トヨタ「スープラ」とBMW「Z4」、両開発チームの協力関係は2014年から途切れていたことが明らかに
2012年から始まった両チームの協業は2年ほどで終了し、その後は情報や知見を共有することなく、トヨタとBMWはそれぞれ独自のクルマ作りを行ってきたというわけだ。
単にベースシャーシとエンジンをフルコンプリートでOEMを受けだたけであり、スポーツカー分野の提携としての意味合いは全く無いように思われます。勿論、シャーシの設計や直列6気筒ターボエンジンのノウハウ供与は一切行われていない可能性が高いです。
実際にモジュールのシャーシやエンジンは欧州の方が進んでいる点でトヨタもBMWのスポーツカー分野の供給に傾いたのでしょう。しかし、技術供与としてはブラックボックスとなり、そのチューニングに4年の歳月を費やす結果となったのです。
基本的に、エンジンや電装系をトヨタのコンピュータ診断機で接続出来るようなエミュレータ変換機で操作しているに過ぎません。
Z4は先行登場しましたが、スープラはまだ市販化の時期を遅れて登場しました。
- トヨタ製ハイブリッドはBMWで使われず
- BMWスポーツカーのノウハウもOEMレベルで全く役に立たず
- 欧州のディーゼル問題により、BMW製ディーゼルエンジン供給も不要となりました
何のための提携だったのでしょうか。あまりメリットの無い提携であったと思います。
BMW Z4とトヨタスープラが共同開発の名の元に登場
BMWのZ4ベースでトヨタスープラが登場しました。エンジンはBMW製の4気筒と6気筒ターボエンジンにZF製8ATを採用しています。インテリアのセンターモニターやメーターパネルにトヨタ製を認めますが、ほぼBMWのインターフェースです。
8.8インチのセンターモニターのサイズは、Z4の10インチに劣るサイズとなっています。
トヨタの整備工場でコンピュータを繋ぐための変換機
エンジンや車体制御は、基本的にBMW製であり、そのままではトヨタの整備工場に備えているコンピューターでは確認できなかったようです。そのため、BMWからトヨタ言語への変換機を新たに追加し、その変換機を通して、トヨタのコンピュータへ接続し、車体状況を確認し、整備可能としています。
BMWとトヨタとの協業の流れ
今回、BMW製のスープラを開発したことに伴い、BMW製機器がトヨタ製コンピュータに接続可能となりましたので、車種の拡大も見込まれるところでしょう。
しかし、今後のBEV化推進により、次期Z4を含むスポーツカーなどが途絶える可能性もあります。
今後の提携としては、FCEVなどの分野に限定される可能性もあります。