BMWはエンジン生産から撤退するのでしょうか。
電動化に完全にシフトするとの噂は本当でしょうか。その実態を解説します。
BMWエンジン生産撤退、噂の背景
- ライバル企業は、BEV(バッテリー電気自動車)にシフトを強めているという背景
- 欧州規制により、2030年以降は電動車が販売中止になるという規制上の制約
- ビジョンノイエクラッセ(2023年登場)のBEV専用プラットフォームを用いたコンセプトモデルの登場により、次期3シリーズは完全にBEVなるとの報道がされていた。
- 一方、最新X1/X2/5/7シリーズは、ICEとBEVが共通のプラットフォームが利用されており、ユーザーはボディ形状の違いを特に意識する必要は無い流れとなっています。
これは、メルセデスやVWのようにBEV専用化とは異なる考え方によるものです。
BMWの研究開発部門責任者の談話
フランク・ウェーバー氏は「第一に、それは事実ではありません。そして第二に、これ以上やることがないというのも事実ではありません」と語り、エンジン開発を継続する姿勢を示した。
上記、責任者の発言により、報道は誤りであり、今後も内燃エンジンの継続生産がおこなわれる事が、明らかとなりました。
エンジンでやるべきこと
規制の厳しい欧州でも、2030年までは内燃車が販売できる規制内容となっています。
BMWとしての2024年目標
BMWとしては、自社の2024年の販売台数において、15%の排ガス削減目標を掲げています。
BEVや48Vマイルドハイブリッド車の比率を高めることで、目標値を達成する取り組みを実施していきます。
2025年7月1日から施行予定の次期排ガス規制ユーロ7への対応
結果、内燃車で上記のユーロ7への規制が達成できれば、ICE(内燃エンジン車)を販売できることになります。
48Vマイルドハイブリッドが進化する
現在、48Vのマイルドハイブリッド車をISG方式で搭載しています。
これは、エンジンとトランスミッションの軸上に配置されており、今後はモーターとバッテリーを強化することで、燃費性能を引き上げることも可能になります。
eフュエールはガソリンの代替になれるのか
BMWのオリバー・ジプセCEOは、EU(欧州連合)がエンジン車を禁止することに強い反発を示し、欧州の自動車メーカーを中国メーカーとの価格競争に巻き込むことになると主張。この競争は「差し迫ったリスク」であるとしている。また、化石燃料に代わる「重要」な選択肢としてeフューエル(合成燃料)への支持を表明している。
一見、合成燃料は、ガソリンやディーゼルの代替となりる未来の救世主であるとの見解もあります。
しかし、この実現に向けては非常にハードルが高いと予想されています。
e-fuelの現実性が低い理由
- e-fuelの生産には、水素が必要
- 水素を作るためには、大量の電気が必要
- 水素生産のための電気を作るなら、その電気をBEVに充電する方が圧倒的に効率的
- 結果、水素を用いてe-fuelを作る事自体が、非合理的であるとの見方
欧州でのe-fuelの生成ルール
- 大気中のCO2(二酸化炭素)を集めて、e-fuelの生産に用いる事
- e-fuelは、e-fuel用に認可した車種のみ販売可能とする事。
このルールは、e-fuel燃料が、従来の内燃エンジン車で使えるようになっては、意味が無いとの理由によるものです。
e-fuel燃料を燃やすと、CO2が排出されますので、燃料生成過程でCO2を吸収しても、意味が無いというのが、根本的な理由となります。
FCEVは、エンジン車はガソリンの代替になれるのか
- 2006年に水素エンジン車(BMWハイドロジェン7試作車)が登場するものの、開発撤退
- 2012年、トヨタと提携し、市販化済のユニットを用いた信頼性も高いFCEV(水素燃料電池車)の試作車が複数モデル登場するものの、未だに市販化すらされず
BMWとして、水素燃料も選択肢として、挙げているものの実際の販売を行わないところを見ると、水素燃料の市場、将来性に疑問があるとの判断がされているのでしょう。
FCEV試作車による環境や技術力のアピールが目的と判断されます。
BMWは全方位戦略(マルチパスウェイ)である
ドイツ政権、EU自体が、環境政策として電動化を強力に推進したことで、近年になり電力不足に陥るなど、経済運営での混迷が見られます。
中国市場の拡大なども、電動化に拍車を掛けた要因となります。
BMWの電動化は欧州トップレベル
- 2010年代のBMW製アクティブハイブリッド車もトヨタの技術は全く参考せず
- 2015年のプラグインハイブリッド車もトヨタより早い
- 2012年のバッテリー電気自動車(BMW i3/i8)でもトヨタに先んじて、モデルを市販化
全方位戦略とは本来、欧州メーカーの事を指す
欧州市場は、高速走行が主体であり、日本製ハイブリッド車の低燃費性能が活かせるシーンは限られています。BMWがトヨタとの提携でトヨタ製THSの供与を受けなかった理由を見れば、トヨタに勝てないという日本メディアの報道は、全くの誤りなのです。
- ダウンサイジングターボ車では、欧州車の方が日本車よりラインナップが多い
- プラグインハイブリッド車でも、欧州車の方が日本車よりラインナップが多い
- 48Vマイルドハイブリッド車でも、欧州車の方が日本車よりラインナップが多い
BMWはエンジン生産から撤退するのか:まとめ
BMWは、もともと全方位戦略として、内燃車のシェアは言うに及ばす、BEVのシェアも抜かりないです。本来、全方位戦略、マルチパスウェイというのは「BMWの事を指す」のです。
決して、「BEV出遅れ」などと叩かれるメーカー事を指すのではありません。
BEVとICEの共存シャーシがBMWの答え
新7シリーズ(G70)、新5シリーズ(G60)のプラットフォームでは、BEVとICEを共存する戦略を取っており、BEV専用シャーシのメルセデスやVWとは戦略が異なります。
BMWは、市場にニーズに応じて、その配分を柔軟に可変できるのです。
ノイエクラッセは選択肢の一つに過ぎない
ビジョンノイエクラッセというBEV専用シャーシが登場したことで、BEV一択に傾注する事はありません。搭載スペースに制約の大きいスモールジャンルは、BEVとICEのシャーシを切り分けます。
中型、大型ボディは、BEV/ICE共存シャーシが受け持つ流れです。
規制の緩い市場で内燃エンジンは延命し続ける
欧州市場は、厳しい規制を敷いていますが、途上国や日本は緩い規制なのです。
そのような国では、以前として内燃エンジン車を売る事ができます。
まだまだ、BMWも規制の緩い市場向けにエンジン車を作り続けるという「まとめ」になります。
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